今年(※2023年)6月、15年ぶりに英国・ロンドンを訪れた。近い将来、日本で感染爆発が起きることを想定した小説『ウイルス』の取材が目的だ。
取材中、「日本は、政府の対応が万全で、死者が少なかったコロナ禍対策の成功国なのでは?」と何度も言われた。実際は、国民による自粛の徹底で悲劇を押さえ込んだだけだ、と答えると「日本独特の均質社会の勝利だったのか」と納得された。つまり、彼らは日本の感染症対策についての知見もないまま、評価していたのだ。
バブル崩壊と「失われた30年」に象徴される平成時代、外国からの日本への関心が薄れ「ジャパン・パッシング」と揶揄され、将来「ナッシング」になるのではと危惧されていたが、令和で現実になったのだ。
英国で長く暮らす日本人も、「英国社会で、日本が話題になることは稀になった」と嘆いていた。
日本にとって英国は、島国同士だし国家体制も近い「身近な国」のイメージがある。しかし、英国では、もはや「地図にない国」になろうとしている。今回の英国訪問では、日本の凋落を思い知らされただけでなく、その現実を私たちが認識していなかったことに、大きな衝撃を受けた。
だが、嘆いている場合ではない。日本は世界に向けての発信力を持つために、何を為すべきかを考え、行動を起こす時がきている。
●初出:月刊「商工会」2023年9月号
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/index.htm