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コラム

キルゾーン〜城は何のためにあるのか 第9回−2
防御施設はどう配置されているのか ②土塁・切岸

日野 真太郎

今回は、土塁(どるい)・切岸(きりぎし)について説明します。
土塁とは、平地に土を積んで敵の進路を妨害する防御施設です。堀を掘って出た残土を堀のへりに積むことで、掘った深さの約2倍の高低差がある障害物が完成します。また、城の郭を土塁で囲むことで、侵入しようとする敵を、上から狙い撃ちできるようになります。

以下の写真は、清水山城(滋賀県高島市)の堀切ですが、尾根線が断ち切られ、残土が右手に積まれて、土塁が作られていたことがわかります。

清水山城の堀切(2012年10月)

堀と土塁は、おそらく弥生時代の環濠集落からあったと見られる原始的な方法ですが、実戦では大いに有用であったと思われます。中世山城では、麓から登っていくと、堀切⇒土塁⇒郭⇒堀切のループが延々と続くことが多くあります。

湯築城の土塁と郭(2017年12月)

また、切岸は、自然に存在する斜面を削って作った人工的な急斜面です。見た目には土塁と区別がつかないこともありますが、進路を妨害する機能は土塁と同様です。

前回説明した堀・堀切と土塁・切岸は、城つくりの基本です。すなわち、山や丘の自然地形を活かして堀を掘り、土塁を積み上げ、斜面を削ることで、城の基本的構造(土木工事)はおおむね完成します。これを断面図で示すと以下のようになります。

自然地形

土木工事の実施

城の完成

このような土木工事によって、敵の郭への侵入を防ぐ、複数の障害を設置することができます。これは、中世山城に限らず、近代城郭でも実施されています。

たとえば、近代城郭である彦根城(滋賀県彦根市)には、巨大な堀切が設けられ、そのまま麓に向けて降りていく竪堀と連続しています。竪堀の横には、敵の移動を妨げる効果をより高める石垣が設けられています。この石垣は、尾根線に向かって登っていくように見えるもので、登り石垣と呼ばれています。また、堀切の片側には、現在も櫓が残っており、堀切の上には、木橋がかけられています。この堀切の構造は中世山城のものと極めて近しく、中世山城で用いられた進化の末に近代城郭があることが分かります。

彦根城の堀切と櫓(2020年11月)

彦根城の竪堀と登り石垣(2020年11月)


〈参照文献〉
『城のつくり方図典』三浦正幸著、小学館、2005年


〈執筆者プロフィール〉
日野真太郎(ひの しんたろう)
弁護士。1985年福岡県生まれ。幼少時を中華人民共和国北京市で過ごし、東京大学法学部、同大学法科大学院、滋賀県大津市での司法修習を経て、2012年より東京で弁護士として執務。企業間紛争解決、中華圏を中心とする国際法務全般及びスタートアップ法務全般を取り扱う。趣味は城巡りを中心とする旅行で、全国47都道府県を訪問済。好きな歴史上の人物は三好長慶と唐の太宗。

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