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巴里日記_17
オミクロン株大流行でも政府を支持〜withコロナ貫くフランス社会

田畑 俊行

フランスでは、11月上旬に1日当たり5000人程度だった新型コロナウイルス新規感染者数(ここでは1週間の平均値を引用)が、12月下旬の時点で70000人程度にまで爆発的に増加した。
政府が公開したデータを見ると、12月に入った頃、デルタ株による感染爆発が起き、そこから急速にオミクロン株に置き換わり、事態をさらに悪化させていることがわかる。クリスマス前には、おそらく家族で集まる前に検査を受けようと考えたのであろう人々が、市中の薬局やラボの前に長蛇の列を作っていた。

感染状況の急速な悪化を受けて、政府は再び規制強化に乗り出した。マスク着用が再び義務化され(あらゆる屋内の公共施設および都市部では屋外にも適用)、1月15日以降には衛生パスポート(ワクチン接種完了や陰性テスト結果を証明するQRコード)からワクチン接種完了しか認めないワクチンパスポートへの変更が予定されている。
また、テレワークの義務化(可能な場合には毎週3日ないし4日間)も1月3日以降少なくとも3週間にわたり実施される。

一方で、夜間外出禁止令は出さず、学校の新学期開始時期も遅らせないという決定がなされた。政府は、3回目のワクチン(ブースター)接種時期の前倒し(2回目接種もしくは罹患後1回目接種から3ヵ月以降でブースター接種可能となる)や、スクリーニング検査の大規模実施(1月31日までの特別措置でセルフ検査キットがスーパーマーケットでも購入できるようになる)によって、感染拡大をなんとかコントロール下に置きたい考えのようだ。

私は幸いにして現在に至るまで一度もコロナウイルス感染検査の陽性者になったことがない。しかし最近になって初めて、政府公式のコロナ対策スマートフォンアプリ「TousAntiCovid」から、陽性者と接触した可能性があると通知を受けた。
直近訪れた場所で思い当たるのは、パリの水族館(Aquarium de Paris)だ。ここでは入場時の衛生パスポートのチェックに加え、時間帯毎の入場可能人数も制限されていたが、水族館の目玉であるショーの上演時には大人から子供まで密室の中にすし詰め状態であった。加えて、義務化対象でない6歳未満の子供のほとんどがマスクを着用していないわけだから、この瞬間のコロナ感染リスクは非常に高かったと言わざるを得ない。また、原則飲食禁止の館内でマスクをずらして飲食している大人が少なからずいた。

冒頭で引用した新型コロナウイルス新規感染者数は、パンデミックが始まって以来、フランスで最多だ。しかし、フランス国民の多くはそれを悲観的には捉えず、むしろ、そうした状況にあってもwithコロナを貫く政府の姿勢を支持していると感じられる。

実際、パンデミック前には一時20%台にまで下落していたマクロン政権の支持率は、パンデミック中に緩やかな上昇を続け、現在では就任当時の水準(50%台)にまで回復しているとする調査結果もある。次期大統領選を控え、強硬な対コロナ規制を行うリスクを取りたくないであろうマクロン政権にとって、この追い風は吹き続けるのだろうか。

先日訪れたパリの水族館(Aquarium de Paris)のショー上演前の様子。密室に観客がすし詰めになっており、小さな子供たちの多くはマスクをしていない。

執筆者プロフィール:
田畑俊行(たばた としゆき)
エンジニア。1983年兵庫県生まれ。京都大学工学部物理工学科を経て、東京大学大学院工学系研究科にて博士号(工学)を取得。その後、2013年に渡仏。原子力代替エネルギー庁電子情報技術研究所の研究員(ポスドク)を経て、現在はパリ近郊の半導体技術関連のベンチャー企業にて研究開発チームを率いる。

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