コロナ禍の最前線で、命がけで闘っているのは、政治家でも官僚でもメディアでもない。
医療従事者だ。
そんなことは、誰でも知っていると言われるだろうが、では、その彼らのおかれた深刻な状況を、真剣に考えられているだろうか。
ニューヨークで始まったことだが、毎晩19時になると、窓の外に向かって拍手をする。あるいは、クラクションを鳴らして感謝の意を表する。
それは、瞬く間に世界に広がった。
また、日本の交通機関では、車内アナウンスで「医療従事者の皆様、本当にありがとうございます」という言葉が発せられている。
いずれも、感謝の気持ちを表すという意味では、素晴らしいことだ。
その一方で、医療従事者やその家族が、近所や保育園、学校、職場などで差別されるという問題は、なかなか解消されない。
頑張ってくれていると感謝はしつつ、感染リスクが高そうな人たちは、近くにいて欲しくない。
そういう相反する状況を見ると、拍手が偽善に思えてしまう。
何より心配なのは、そうでなくても過酷な勤務環境で働いている医療従事者が、コロナ禍のハイリスクな環境で、命がけで働いているのに、正当な報酬が支払われていないことだ。
政府は、緊急事態宣言に関連して、営業時間短縮要請に応じた飲食・カラオケ店に対して1日6万円の協力金を支給すると発表した。Go toキャンペーンの中断でキャンセルが発生した観光業界にも、損失補填を行う予定だ。
だが、それ以上にしっかりとした経済支援をすべきなのは、過酷な使命に死力を尽くしている医療従事者ではないのだろうか。
昨年、政府は、医療従事者を対象に慰労金5万〜20万円を給付している。
だが、彼らの激務に対して、その程度が正当額とは思えない。余人をもって代えがたい仕事をしている人たちにこそ、感謝と慰労の気持ちを態度で表して欲しい。
経済優先を繰り返し口にする政権だが、医療従事者らが皆、過労に倒れた時、医療体制は崩壊し、瞬く間に経済活動どころではなくなるという想像力もないのだろうか。
コロナと闘っている医療従事者の尊い献身に対して、本当に感謝の意を表するならば、それに報いる支援をしっかりと行うべきだ。