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コラム

東大生日記 diary3『長期インターンの罠』(執筆者:文系I)

真山メディア編集部

近頃の若者は、何を考えているのか――。
未来のエリート候補と言われている東大生の“今”を、彼らの言葉で綴る。
そこから覗くのは、希望か、絶望か。

■diary3 長期インターンの罠

私は大学1年生の2月から有給で長期インターンをし、これまで2つの会社で働いてきた。何故か?正直に言えば、流行りだったからに他ならない。一般的には、インターンは、3,4年生になってからと思われがちだが、近年、インターン体験は前倒し傾向にあるようだ。
また、インターン専門の紹介サイトもある。

実際、私の周囲には企業の長期インターンに取り組んでいる東大の友人がかなり多い。就活時期に増える数日~一週間の無給短期インターンとは違う。半年~数年勤務するつもりの学生をアルバイトのように雇い、シフトに従って仕事を割り振るものである。友人たちの勤務先は基本的に小~中規模のベンチャー企業、スタートアップ企業で、業務内容は文系生徒なら記事執筆や調査業務、理系ならプログラミングなどやや専門的な業務も含まれる。

インターンを1年生の2月に始めるというのは早い方で、そこで会った他大学の3年4年先輩に驚かれた。私も大学進学で上京するまで、地元の長崎にいたころはバイトといえば飲食店か塾講師と思っていたし、実際時給2600円の塾講師を始めて、継続する気満々だった。しかし、「就職にはインターンをしておいた方が良い」「塾講師を2年やっても学びがない」「無駄な時間があるならインターンに使うべき」などと東大の友人に脅されて急いでインターン紹介企業の面接を取りつけた。

学生は、社会人に交って基礎的なスキルや経験、やりがいを得ながら給料も貰えるのだからいいことずくめだと感じている。特にベンチャー企業だとある程度裁量権を与えられることもあり、応用的なスキルやプロジェクトのマネジメント、他のインターンの統括の仕方などを学ぶ機会も転がっていて魅力的ではある。

もちろん、企業側にとってもメリットはある。
社会人と同等に扱ってあげるよと偉そうに言われるが、渡されるのは最低時給ぎりぎり。仕事内容もお寒い限りだ。
教育環境の整っていないあるコンサルティング企業に勤めたことがあるが、その時は最悪だった。延々とつまらない調査をさせられるわ、質が悪いと怒られるわ、といって社員の指示も曖昧で彼らから渡される資料や指示だって質が低いので参考にならなかった。極めつきは工数管理だ。この調査に何時間かかったか自分で記入しろというのだが、そのシートには社員とインターンの時給が書いてあって、工数と掛けてコスト全体を計算していた。
全く同じ業務でも時給は固定で、インターン生が多く作業すればするほどプロジェクトのコストは、社員が携わるより下がるのがよく分かる。
それでも、自分としては納得がいかず、企業の美味しいように搾取され続けるくらいなら大学の授業やサークルの練習に励んだ方が自分の為になると思って辞めると伝えたときは、とても怒られた。「これだから東大生は」と言われた時に、この企業は以前にも東大生に煮え湯を飲まされたことがあったのかと思い知らされた。入社前に知る由もなく、無駄な3ヵ月を過ごしてしまった。

尤も、こんな酷い企業ばかりではない。現に、今通っている企業は教育環境が整いすぎてこんなにインターンに配慮して大丈夫かと、心配になるし(相変わらず最低時給だが)、そこで仲良くなった同僚インターンは、任せられるプログラミングのプロジェクトのレベルが上がるのが楽しくてしょうがないと言っている(彼の時給は、私より高いらしい)。学生のためになるインターンもある。

問題は学生が、インターンする企業を見極める手段がないことだ。
取り敢えず入ってしまうとどうなるか。シフトが自由でないインターンもあるし、一定時間の勤務を義務付けていたり、テストなど考慮しますと言われつつ、あまり勤務できないとプロジェクトの端っこの雑用ばかり渡されてしまいやりがいが減るのでシフトを増やす、という企業が多い。それで授業やサークルの活動に顔を出さなくなる。

最近はインターンを始める時期がますます早くなっているように感じる。私の所属するサークルでは例年より応募が少ないので他のサークルに聞いたところ、どこも少なくなったという。どこに消えたのかと思いきや、入学当初からサークルよりもインターンに参加するという東大生も増えているらしい。

学生時代の経験を犠牲にするほどか、と聞かれることがある。そうは思えない。
インターン生なのに社員並みの待遇という人は本当に少ない。
皆実はたいしたことないことばかりしている。しかし、日本の教育ではビジネスに使えることを何も教えてくれないので、ちょっとしたExcelの作り方やパワーポイントスキルを身に着けるだけで魅力的な時間に見えてしまう。また今時、就活でバイトリーダーの経験を語るよりインターンの実績の方が使えるという、採用担当者の声を聞くと怖くなるからというのもある。

私も後輩にインターンを勧めている。ただ、インターンなんてアルバイトだと思った方がいいとも言っている。自分の時間が無駄になっていると感じたらストップする。学生として優先したいことはちゃんと企業に伝える。
インターンは、星の数ほどあるし、自分に合うところを見つけるのが一番だ。
私は今2社目のインターンだが、優しい社員さんと融通の効く環境が大好きなので4年まで居座ろうと思っている。飲食店よりも塾よりもゆるゆるとお金を貰おう、それくらいのモチベーションである。
【文系I】

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