真山メディア
EAGLE’s ANGLE, BEE’s ANGLE

テーマタグ

舞台裏

地熱沸騰 -3-
全国初、地熱中心の地域新電力「はちまんたいジオパワー」

柳田 京子

2006年から地熱開発促進調査がスタートし、2019年に、国内では22年ぶりに新規稼動した地熱発電所が、岩手県にある。八幡平(はちまんたい)市の松尾八幡平地熱発電所だ。
出力は7499kWとそれほど大きくないが、年間発電量は、一般家庭約1万5000世帯分の消費電力に相当する。

そこから車で約30分の場所で、今年(2024年)3月、新たな地熱発電所が営業運転を開始した。八幡平山国有林内にある、安比地熱発電所だ。

こちらの地熱開発促進調査は2000〜2003年に始まり、有望な地熱資源量が存在すると評価されたものの、環境に及ぼす影響の調査や評価に時間がかかり、実際に建設工事を開始したのは2019年だった。松尾八幡平の倍近い、1万4900kWの出力で操業している。

このふたつの地熱発電所から電力を調達する、地域新電力の「はちまんたいジオパワー」が、八幡平市に設立された。小中学校などの公共施設や民間施設に電力を供給する予定だ。
地熱発電所の電源を中心とする地域新電力は、全国で初めてであり、2025年2月に事業を始めるべく準備をすすめている。

JFEグループ傘下で電力小売事業のアーバンエナジー(横浜市)を主な出資元とし、電力の「地産地消」を目指して、八幡平市や、岩手銀行、北日本銀行、盛岡信用金庫といった地元の金融機関も出資、協力体制を敷いている。

八幡平には、1966年に日本で初めて操業した地熱発電所「松川地熱発電所」もある。50年以上経過した今でも発電し続けており、運転を開始した10月8日は、地熱発電の日として記念日に認定されている。

ちなみに、八幡平のお隣の雫石町には、国内第2位の出力を誇る「葛根田地熱発電所」もあり、このエリアは、国内の地熱発電所のパイオニア的存在である。

八幡平市は「2050年に二酸化炭素排出実質ゼロを目指す」と表明しており、はちまんたいジオパワーの事業開始は、脱炭素化に向けた促進剤として期待されている。



【参考資料】
松尾八幡平地熱発電所(JOGMECのHPより)
https://geothermal.jogmec.go.jp/information/plant_japan/015.html

安比地熱株式会社
http://www.appige.co.jp/company.html

アーバンエナジー株式会社
https://u-energy.jp/news/release/961/

八幡平市地熱ヒストリー動画
https://www.youtube.com/watch?v=vHcPsnLTCcE




プロフィール:
柳田京子
真山仁事務所スタッフ。フリーランスの編集・ライター。

あわせて読みたい

ページトップ