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地熱沸騰 -5-
地中熱を利用する、とは

柳田 京子

“地熱”というと“発電”を思い浮かべる方が多いだろうが、発電をしない地熱の利用方法もある。

地熱発電は、地下深くにある熱水溜まりから取り出した熱水・蒸気でタービンを回して発電する仕組みだ。つまり、地熱エネルギーを電気に変換して利用している。
そうではなく、地熱そのものの“温度”に着目し、そのまま有効活用することもできる。それが「地中熱利用」だ。

昨今では10月でも真夏のような気温が続き、日本が熱帯化しているとも言われるが、地上では実際には1年を通して気温が変化する。夏は30℃以上、冬は0℃くらいになることもある。
一方、地下10〜100m程度の地温は変わらず一定で(北海道で10℃、東京や大阪で17℃)、その場所の年平均気温にほぼ等しくなっている。気温と比べて夏は涼しく、冬は暖かいため、縄文時代の竪穴式住居のように、地下に穴を掘って住空間として利用するのは理に適っていたわけだ。

このように、足元にある「恒温」のエネルギーを温熱・冷熱として利用する方法は、1970年代のオイルショックをきっかけに欧米諸国を中心に開発・導入されているが、日本ではまだまだ知られていない。

地中熱の利用形態としてもっともポピュラーなのは、「ヒートポンプシステム」と言われる方法だ。
地上の建物と地下をヒートポンプで繋ぎ、水や薄めた不凍液を循環させて、夏は冷房、冬は暖房に使う。暑いときは室内の熱を地下に排熱し、寒いときは地下の熱を建物内に取り込む。
2012年に開業した東京スカイツリーは、地中熱を使って、地域内の建物にまとめて冷暖房を行う大規模なシステムを導入していることで注目された。従来の設備と比べて、CO2排出量は年間40%、エネルギー消費量は年間48%、削減できるという。

日本での地中熱の認知度を上げたいと、地中熱のうたも作ったJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)特命参与の安川香澄氏は、「普通のエアコンをやめて地中熱ヒートポンプを利用すれば、排熱先が地下なのでヒートアイランド現象が緩和されるし、エネルギー効率もよく、CO2排出もなく、良い面ばかり。ほとんど悪いところはありません」と語る。

この地中熱利用に熱心なのは中国で、国策で急拡大を果たし、地中熱ヒートポンプの設備容量では米国を抜いて世界1位、2万6450MWtである(2020年度)。対して日本は196MWt。今後の成長が期待される。


【参考資料】
地中熱利用促進協会
https://www.geohpaj.org

「地熱エネルギーの役割と展望」――2024きいぱすサイエンスカフェでの講演
https://www.youtube.com/watch?v=SID3x7jgW5g

足元もすごい東京スカイツリー 総延長12キロの大規模地域内冷暖房システム 地産地消の地中熱エネルギー(「東京新聞」2023年1月21日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/226568

地中熱のうたVer W
https://www.youtube.com/watch?v=S6vVGcyCLjU

地中熱のうたVer M
https://youtu.be/gHYg04qWEsg?si=ks1VTrqT8x_v11Jc



プロフィール:
柳田京子
真山仁事務所スタッフ。フリーランスの編集・ライター。

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