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コラム

自著を語る『「2人の社長の自殺」から見えてきたJR北海道の末期的な姿』

西岡 研介

昨年、JR東日本社員の8割超が加入する同社の最大労組「JR東労組」(約4万7000人)から、3万5000人もの組合員が一斉に脱退し、労働界に衝撃を与えた。
2018年2月に行われた春闘で、ベアをめぐる団体交渉の席上、JR東労組はJR東日本に対し、1987年の国鉄分割・民営化以来初めてとなる「スト権行使」を通告。これに対し、会社側は発足以来、同組合と締結を重ねていた「労使共同宣言」の実質的な破棄を通達した。

これを機に、JR東労組からの組合員の大量脱退が始まったのだが、この組合を、分割・民営化以来、牽引してきたのは、松崎明氏(2010年12月に死去)。国鉄時代、過激な闘争方針で知られ、「鬼の動労」と呼ばれた「国鉄動力車労働組合」を率い、公安当局から「極左暴力集団」とされる「革マル派」のナンバー2だった人物だ。
分割・民営化前年の1986年、動労委員長だった松崎氏は、国鉄内の革マル派組織を守るため、それまで反対だった方針を百八十度転換。賛成に転じ、JR東労組や、その上部団体「JR総連」を結成した。このため公安当局は、両組合には今なお、〈影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透している〉とみている。

本書では、松崎氏の死を機に、「革マル系労組」に対する攻勢を一気に強め、「スト権行使通告」という〝暴発〟にまで追い込んだJR東日本の舞台裏を描いた。

だが、実は、本書の主たるテーマはJR東日本ではない。今日もなおJR総連傘下の革マル系労組を最大組合として抱える「JR北海道」だ。
JR北海道では、2011年9月に中島尚俊・第4代社長が、2014年1月に坂本眞一・相談役(第2代社長)が自殺した。わずか2年余の間に、社長経験者が相次いで自殺するような会社が、「まともな組織」であるはずがない。私はこれまで、この「2人の社長の自殺」という、国鉄・JR史上、例を見ない〝事件〟の真相を追い続けてきた。
そこから浮かび上がってきたのは、今日もなお、革マル派の思想を色濃く反映した、他労組との「平和共存否定」という偏狭な方針を掲げる、同社の最大労組「JR北海道労組」と、それと癒着した経営幹部による「歪な労政」によって蝕まれてきた、この会社の末期的な姿だった。

JR北海道では、2018年度の連結営業損益が過去最悪の418億円の赤字に達し、「2020年度には資金ショートに陥る」として、政府に2030年度までの長期支援を求めた。これを受け、国交省は、2019、20年度の約2年間で、計約400億円を支援する方針を決定した。
つまり旧「国鉄」に再び、国民の税金が投入されるわけだが、そのJR北海道の実態は果たして、どうなっているのか……。北海道民をはじめ、一人でも多くの国民に読んで欲しいと切に願っている。



紹介した本:
『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』(東洋経済新報社)

執筆者プロフィール:
西岡研介(にしおかけんすけ)
ノンフィクションライター。1967年、大阪市生まれ。90年に同志社大学法学部を卒業。91年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 98年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者。『週刊現代』時代の連載に加筆した著書『マングローブ――テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で、2008年、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社、12年)などがある。
Twitter https://twitter.com/biriksk

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