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地熱沸騰 -2・1-
「地熱をブレイクスルーするために」(前編)

柳田 京子

2024年7月24日、都内某所にて、日本地熱協会が主催する「令和6年度 第2回情報連絡会」が開催された。

当協会は、地熱発電事業の健全なる普及促進を目的に、2012年12月に設立された任意団体。正会員と特別会員あわせて国内の約100社(団体)が参加し、地熱発電に関する、政府その他関係機関に対する提言と陳情、情報収集と調査研究などを行っている。
https://www.chinetsukyokai.com/index.html

情報連絡会には、約70名の会場参加者だけでなく、WEBでの参加もあり、会員によるJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)助成金を利用した地熱探査事業の紹介や保険会社による地熱保険に関する取り組みの説明、専門部会からの報告のあと、「地熱をブレイクスルーするために」と題した、真山仁の特別講演が行われた。

会場からの質疑応答とともに、講演の抄録を2回にわたってお伝えする。

・・・・・

2006年に『マグマ』を書きました。日本の地熱発電が進まない原因を、小説の中ではすべて解決して、こうすればうまくいくというアイデアを提案したつもりです。書いた本人としては、これで日本の地熱発電は発展するに違いないと思っていましたが、こちらにもいらっしゃる、当時お世話になった方には「デビューしてすぐの作家さんが、地熱発電のように地味な話を小説にしないほうがいい」と説得されたのをよく覚えています。

しかし皆さんご存知のように、東日本大震災の起きた2011年、地熱の風が吹きました。原発が止まり、自然エネルギーであり、(コストが安く安定的な)ベースロード電源にもなれる地熱発電が注目されたのです。
その頃、超党派の地熱議連をつくるので、参加する政治家たちに、地熱がどれだけすごいか話してほしいと、私のところにも資源エネルギー庁の人から依頼がありました。とにかく地熱発電を推進しないといけないと、担当者は真剣でした。

同議連は民主党、自民党、公明党、社民党、みんなの党の国会議員で構成。最高顧問には福田康夫元首相も名を連ね、共同代表は二階俊博元経産相と増子輝彦元参院復興特別委員長が務めました。そうそうたる顔ぶれで本気度を感じました。

法律をつくる、変えるのは時間がかかるので、現存の法律と制度のなかでとにかく前に進ませたい、とこのプロジェクトを仕掛けた資源エネルギー庁の担当者から言われたのが印象的でした。

当時予定されていた新規地熱発電所の目玉は、福島県の会津磐梯山で27万kw規模。
由布院のそばにある八丁原地熱発電所が、11万kwで国内最大ですから、とても期待されていましたが、残念ながら、実現できずにいます。

その後しばらく地熱発電の開発は停滞していましたが、数年前から、再度地熱の風が吹き始めました。それは「カーボンニュートラル」の波の影響です。
2020年に当時の菅義偉総理が、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
原発がいくつかストップしているため、必然的に、CO2排出量の大半を占める火力発電から、CO2を排出しない発電に切り替える必要があります。

昨年(2023)春から、超党派議連のなかに10名ほどで「マグマプロジェクト」が結成されました。地熱法の作成をミッションに、専門家を呼んで勉強会を開いたりして、私も参加していますが、本気で動き始めています。

【後編につづく】





プロフィール:
柳田京子
真山仁事務所スタッフ。フリーランスの編集・ライター。

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