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発言

沈思熟考(15)
現代は、本当に「生きにくい」時代なのか

真山 仁

縁があって一代で事業に大成功した創業会長と対談した。
その時、その会長から「最近の若者は、今を生きにくい時代と言う。でも、私からしたら、こんな生きやすい時代はないのにと思う」という発言が飛び出した。

団塊の後期世代に当たる会長は、「高度経済成長期を、世間は高く評価するが、生活をするのは大変だった。今の時代、ないものがないと言えるほど充実している。これで、生きにくいと言うなんて、いったい何が足りないというのか」と嘆息する。

確かに、物質的な豊かさや社会制度などは、昭和時代より、令和の現代は、はるかに充実している。便利で清潔、安心な社会は、世界屈指だ。
だが、若い世代は口を揃えて「未来に希望がない。子どもなんて到底育てられない」と嘆く。

会長の話を聞いていて、同意すると共に、若い世代が生きにくいと感じる理由を改めて考えてみた。
余りにも便利になり過ぎて、ないものがない社会で、何かを勝ち取ろうという意欲や、渇望感を持つのが難しくなっている。これ以上の社会を望めるのか、という問いに、誰もが「難しい」と実感している。

つまり、文明が頂点を極めて「後は、落ちるだけ」という不安ばかりが広がる。
しかし、それは、戦後積み上げてきた価値観に基づいた社会が、危うくなっているだけではないのか。
これ以上の未来が望めないなら、今の延長線ではない新しいルールと基盤をもとにした道を模索する時が来ている――。

私は以前から、若い世代に「スクラップが進めば、後はビルドだけじゃないか。フロンティアに挑み、新しい価値観の中で希望を掴め!」とハッパを掛けている。
しかし、若者の反応は鈍く、もどかしさを感じていた。
そんな時、冒頭の創業会長の言葉に触れた。

そうだ。現代は、「生きにくい社会」なのではなく、それは、言い訳にすぎない。過去の価値観に縛られず、生きやすくするために自らが挑戦すれば、フロンティアが広がる時代だと、発想を変えてみてはどうか。
そんな問いかけを、若い世代に続けたいと思う。



●初出:月刊「商工会」2025年11月号 
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/index.htm

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