故あってアガサ・クリスティーの再読を始めた。
GWに読み終えたのは、『五匹の子豚』。ポアロ物の後期の傑作と言われているが、初読は高校時代だったので、既に40年前。それ以来手に取っておらず、すっかり忘却の彼方だったため、ある意味、初めての感覚で読み進めた。
なぜ、この作品を覚えていなかったのか。記憶に残っていなかったことが悔しくなるくなるぐらいの傑作だった。
クリスティー作品の登場人物の大半は、「嘘つき」で、その嘘をどう見抜くのかが、読者の知恵の絞りどころ。
だが、本作の場合は、「嘘」というより、前提が異なると違う意味に響くという「ダブルミーニング」のオンパレードで、しかもそれが巧みに隠されている。そのきめの細かさとさりげなさが明かされた時には、愕然とした。この衝撃は、初読の時よりも、歳を重ねた今のほうが強いかもしれない。
さらに、解説でミステリ評論家の千街晶之氏が指摘されているように、「クリスティー作品史上一、二を争う“名犯人”小説」でもある。読了して残るやるせなさは、人生を長く生きてきた分、余計に重く響く。
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