日本は、「プランB」を作らない国だという。
準備した計画(プランA)が、不測の事態が起きて崩壊した時の、緊急避難手段のことだ。
エンターテインメントの世界では、「プランBのない作品は、つまらない」というのが常識だし、私自身も小説を書く上で、常に意識している。
予測しなかった出来事が起こるのは、想定できるはずなのに、現実世界では、なぜ「プランB」を避けてしまうのか。
日本の場合は、「言霊信仰」のためと言われている。言葉にしてしまうと現実化するという「思い込み」だ。
日常生活でも、言葉にした悪い予感が、直後に起きたという経験をした人は多いだろう。
だから、「まさかのことは言語化しない」のは、「お守り」のように考えられている。
一方、「○○神話」という言葉がある。こちらは、「絶対大丈夫」という言霊に縋(すが)っている。しかし、人間のすることに、絶対はない。「土地神話」は、バブル経済崩壊で、吹き飛んだ。「安全神話」が否定されたのは、東日本大震災時の原発事故からだ。
「だから、保険に入っている」という人もいるだろう。
だが、保険は多少の備えにはなっても、最悪の事態に打ち勝つほどの力はない。
従って、まさかに備えて、あり得ないような危機脱出法を用意しておくことが、先行きが不透明な現代社会では、絶対必要だと私は確信している。
それを小説家の妄想と考えていただくのは、構わない。だが、そういう妄想が、過去に何度も現実化してきたことは付け加えておく。
また、プランBを考えるのは、とても楽しい。しかも、思考が柔軟になる。
試しに、組織内で「プランBコンテスト」でも、開催してはどうか。きっと社員の想像力の活性化にも繋がるはずだ。
●初出:月刊「商工会」2026年3月号
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/index.htm

