2024年は、大震災で幕を開けた。
1995年の阪神・淡路大震災、2011年東日本大震災、2016年熊本地震と、大きな震災が起きるたびに、「過去の経験は生かされたのか」という声が上がる。
今回の能登半島地震では、圧死で亡くなった方が多い。死因だけを見ると、阪神・淡路大震災の被害に近い。あるいは、被災地は過疎化が進む地域だと見るなら、東日本の教訓も生かされるかもしれない。
発災直後、そうした過去の“経験”を元に、行政もメディアも、先入観を持ってしまった。その結果、今回の震災の重大な特徴を見落としたのではないかと、私は懸念している。
それは、現地へのアクセルルートの大半が遮断されて起きた「情報の断裂」だ。今回は、前述の大震災と比べて、被災状況の詳細がなかなか伝わって来ず、実情の把握が遅かった。にもかかわらず、限られた情報を前提に対策を考えたのではないだろうか。そのため、実際に必要な支援が行き渡らなかったのではないか。
経験や教訓は重要だ。
だが、それ以上に、情報取得の状況を精査し、現状を正しく認識するという大前提を、けっして疎かにしてはいけないことを、今回の震災は突きつけている気がする。
●初出:月刊「商工会」2024年3月号
https://www.shokokai.or.jp/shokokai/gekkan/index.htm