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発言

『正しさを疑え!』第9回
日本はコロナ対策に「成功した」のか

真山 仁

5月25日、安倍晋三総理は、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために発令していた「緊急事態宣言」を全面解除した。
それを受けて翌日、WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長は、日本の緊急事態宣言によるコロナ対策を「成功」と評価した。
既に世界で信用を失っているテドロス事務局長に「成功」と褒められても嬉しくもない。それはともかく、「我々は新型コロナウイルス対策に成功した」と考えている日本人が、一体何人いるのだろうか。
PCR検査数が他国と比べて圧倒的に少ないので、感染者数が少ないのは参考にならないし、死者数も西欧に比べたら少ないものの、アジア諸国内では多い方だ。
「成功した」という実感は薄いのではないだろうか。

多くの死者を出している米露英伊などでは、ほぼ、戒厳令に等しい徹底的した外出禁止令が発令された。それでも、死者が後を絶たなかった。日本のように多くが高齢者という訳でもなく、身近な人たちが新型コロナウイルスによって命を落としている。
数字だけを見れば「大成功!」なのだから、本来であれば、安倍総理は「我々の政策のお陰で死者が少なかった」と喧伝すればいい。
ところが、(コロナ対策だけが原因ではないが)内閣支持率は急降下し、誰も、政府のお陰で、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めているとは思っていない。 

極論すれば、日本のように人口が多い先進国で、「自粛要請」しかしていないのに、こんなに死者が少ないのは、奇跡としか言いようがない。
諸説はある。BCG効果だとか、土足で自宅に上がらないとか、ハグをしないとか等々。だが、決定的な原因は、まったく分かっていない。
国家が及び腰の無責任な政策しかとれていないにも関わらず、西欧に比べて死者が少なくて済んでいるという“奇跡”に我々は戸惑っている。

数字だけ見ると、どうやらアジア諸国全体に、同様の状況が起きているようだ。
おそらくは、何らかの人種的な差異などの理由で、我々は新型コロナウイルスで死ににくいようだとしか言いようがない。

だから、浮かれてはいけない。
もしかすると、突然、この奇跡の効果が消え去り、感染者が爆発的に増え、死者が急増する可能性はあるのだから。その時は、今までのような緩い外出自粛では対応できないだろう。

原因が分からないまま、経験の無い現象が起き続けていく怖さを、我々はこの数ヶ月ずっと感じている。
幸いにも結果オーライの事態となり、安心したくなるのも当然だ。
しかし、奇跡が続いている間に、我々は万全の態勢を整えるべきなのだ。
ウイルスの正体を究明し、治療薬やワクチンの開発に、国を挙げて注力する。国民は免疫力を上げて体力を付け、感染者や死者の数に一喜一憂せず、健康体を維持することで、この得体の知れない敵に立ち向かう準備をする――。

遠くない将来「なぜ、もっと慎重に緊急事態宣言解除を検討しなかったのか」などと言いたくなるような局面に陥る可能性はゼロでは無い。
だが、日本においてはそもそも、宣言そのものが「自分の命は自分で守れ」というものでしかなかったのだ。総理の宣言に惑わされず、自分の命を守る国民の本領発揮はこれからだ。

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